単純な男、オタク
ラジオで「SHIROBAKO面白いっすよ」
と発言したというだけで、星野源が好きになっちゃう。
まだ彼の曲は一つも聴いてないし、これから聴くのかすら怪しいが、それでも好きになっちゃったのである。
単純だ。
※SHIROBAKOはアニメ業界を描くアニメである。2014年10月〜2015年3月に放送された。
オタクという人種は、こういうことに敏感になりがちである。
福山雅治が「ニコニコ見てます」「初音ミクいいですよね」というだけで「福山雅治最高だな」とか言っちゃうし、
ラブライバーとして有名なキスマイの宮田くんのオタク(ネット)人気は凄まじい。
彼らが自分たちオタクに同調しているというのは、オタクにとても勇気を与えてくれる。
オタクは、従来迫害されてきた生き物だった。
美少女アニメを見ていれば「あいつ気持ち悪い」とクラスでは除け者にされる。
生身の人間との連帯を築けなかった彼らは、ネット社会にそれを求めた。
それはそれぞれがとても薄い、弱いつながりで、一方で無限に広がるものでもあった。
それでも、ネットという場所でしかない。
現実世界でのつながりに敵うことはないのである。
彼らが市民権を持っているのは、パソコンの前だけだった。
では、クラスの中でも現実世界でも市民権を得るには、どのような条件が必要か。
それは「オタクのステータス化」ではないだろうか。
ではステータスとなるにはどうすればいいか。
影響力の強いやつ、すなわちイケメンがオタクになることである。
だから彼らは福山雅治がニコニコを見ているとわかった時に「僕も見てていいんだ」と安堵したのである。
それは、クラスにおいても同じことが言える。
以下は中学2年生の頃の体験談である。
当時の僕はアニメにもアイドルにもハマっていなかった、純朴(?)な少年であった。
少し頭が良かったこともあり、クラスの参謀役みたいなボジションを得ていたような得ていないような人間だった。
そんな僕に、ある日の掃除の時間、イケメンが小声で話しかけてきた。
「AKBが好きになっちゃったかもしれない」。
僕は「え、キモ」と素直に返した。笑いながらではあったが。
しかし、こういうやつがアイドルにハマるなんて面白いなあと感じ、彼に対して好意的でもあった。
事態が急変するのは、数週間後だった。
女子も含め、クラス中がAKBにハマっていたのだ。
とても信じられなかった。
クラスの中において、「AKBが好き」ということは従来なら迫害の対象でしかなかったのに、イケメンが一人でそれをひっくり返したのだ。
「アイドルオタク」というポジションは、市民権を得るどころか、与党にまでなってしまったのである。
そういうわけで、オタクはイケメンの出現によって、市民権を得ることが可能なのである。
福山雅治のおかげで(もちろんそれ以外の要素は腐るほどあるが)、ニコニコを見ることへの抵抗感というものは薄らいだと思う。
宮田くんのおかげで(もちろんそれ以外以下略)、ラブライバーであることは迫害の対象ではなくなく、むしろ一種の個性として見られるようになった。それ以外の要素には「スクフェス」が一つあるだろうが、これもまたイケメンというかリア充もやっているということで、ウェイ大学生たちも一緒にやるようになり、ラブライバーが幅を利かすことができるようになったのではなかろうか。
オタクの社会的地位向上が期待されるような「脱オタク化」が進むのは、パンピーの「オタク化」が進むことによって成される。「オタクのフラット化」とでも言おうかな。
そのパンピーの「オタク化」が進むには、イケメンがオタクになることが重要な条件だと思っている。
なんでこんなことを長々と書いたかといえば、僕は星野源がSHIROBAKOが好きというのはとても嬉しいからだ。
なぜなら僕はSHIROBAKOが大好きなのである。
そしてSHIROBAKOを作ったアニメ制作会社「P.A.WORKS」が大大大好きだからである。
星野源の発言をきっかけに、SHIROBAKO並びにP.A.WORKSが世間的に認知されるようになり、
自分の社会的地位の向上につながれば良いと思っているのだ。
「星野源だって見てるんだぞ!?むしろ何で見てないの!?」
とドヤ顔したいのだ。
……自分のことしか考えてない、嫌な人間だなあ。